「夜勤手当」と「深夜割増」は別のお金 — 給与明細のその行、法律のぶんと職場のぶんに分けて読む
夜勤明けの朝、ロッカーでスマホを開いて給与明細を見る。 夜勤の回数は先月より多かったのに、手取りはそんなに変わっていない。 「夜勤手当って、こんなものだっけ」
そう思ったまま、明細を閉じていませんか。
明細の「夜勤」に見える行は、実は2種類のお金が混ざっています。ひとつは法律で最低限が決まっているぶん。もうひとつは職場が自分で決めているぶん。この2つを分けて読めるようになると、「少ない」の中身が見えてきます。
目次
法律で決まっているのは「深夜割増」だけ
労働基準法第37条は、原則として午後10時から午前5時までの労働に、通常の賃金の25%以上を上乗せするよう使用者に義務づけています。これが深夜割増(深夜割増賃金)です。
一方、求人票や明細に出てくる「夜勤手当」「夜勤1回◯円」は、法律の言葉ではありません。各事業所が就業規則や給与規程で決めている手当です。だから金額も、1回いくらなのか時間あたりなのかも、職場ごとに違います。
| 深夜割増 | 夜勤手当 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法第37条 | 職場の就業規則・給与規程 |
| 対象 | 22時〜5時に働いた時間 | 職場の定義による(夜勤1回、準夜・深夜の区分など) |
| 最低ライン | 通常の賃金の25%以上 | 法律上の最低額はない |
| 確認する場所 | 明細の「深夜」「割増」の行 | 就業規則・給与規程 |
ここで確認したいのは、自分の職場の「夜勤手当」が深夜割増を含んだ名前なのか、深夜割増とは別に上乗せされているのかです。明細に「深夜割増」の行が別にあれば後者。「夜勤手当」の1行しかなければ、その中に法定の25%が入っているのか、就業規則で確かめる価値があります。
「25%」の元になる金額に、入らない手当がある
深夜割増の25%は、基本給だけにかかるのではありません。通常の労働時間の賃金が計算の元になります。
ただし、法令で「元の金額に入れなくてよい」と決まっている手当があります。労働局のページに挙げられているのは次の7つです。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われた賃金(賞与など)
つまり、通勤手当や家族手当をもらっていても、その分は深夜割増の25%には反映されません。「手当は多いのに割増が少ない」と感じる理由の一つはここです。
ただし労働局は「名称にかかわらず実質で判断する」と念を押しています。たとえば「住宅手当」という名前でも、全員に一律の定額で払われていて住宅費に応じて計算されていないなら、除外できず計算の元に入れなければならない、という説明です。名前で判断せず、支給のされ方で見ます。
月給の場合、1時間あたりの元の金額は「月給 ÷ 月の所定労働時間数」で出します(月によって所定労働時間が違うときは1年平均)。自分の時間単価がいくらかを先に出しておくと、明細の割増の行が計算どおりかを確かめられます。
時間外や休日と重なると、率は足し算になる
夜勤で残業になった、あるいは法定休日に夜勤が入った。このとき深夜の25%はほかの割増と足し算になります。労働局のページの数字はこうです。
| 状況 | 率 |
|---|---|
| 深夜のみ | 1.25 |
| 時間外が深夜に重なる | 1.50(1.25+0.25) |
| 1か月60時間を超えた時間外が深夜に重なる | 1.75(1.50+0.25) |
| 法定休日労働が深夜に重なる | 1.60(1.35+0.25) |
夜勤明けにそのまま延びた時間が22時〜5時の帯にかかっていれば1.5。明細で「残業」の行だけ増えて「深夜」が増えていないなら、ここを見直す材料になります。
シフト勤務で確認しておくこと
ここまでは法律の最低ラインの話です。実際の明細を読むとき、シフト勤務の人が確認しておくとよい点を挙げます。断定できない部分は「確認する」と書きます。
- 深夜の時間帯は「働いた時刻」で決まる。 準夜勤・深夜勤といったシフトの名前ではなく、22時〜5時に実際に働いた時間が対象です
- 仮眠・休憩の扱い。 夜勤中の仮眠時間が労働時間として扱われているかどうかは、割増の対象時間に直結します。就業規則と実際の運用を確認してください
- 変形労働時間制の有無。 病院や施設では1か月単位の変形労働時間制を採用していることがあり、その場合は「何時間からが時間外か」の数え方が通常と違います。この記事ではその数え方までは確認していないので、採用の有無だけでも就業規則で見ておいてください
- 夜勤手当の定義。 「夜勤1回◯円」は深夜割増込みか別か。準夜と深夜で額が違うか。ここは法律ではなく給与規程の話です
「少ない」の正体を分けてから、次を決める
夜勤の対価が見合わないと感じたとき、その原因は3つに分かれます。
- 法定の深夜割増が計算どおり払われていない → 明細と就業規則を照らし、違えば職場に確認する(労働基準監督署の相談窓口もあります)
- 法定ぶんは正しいが、職場の夜勤手当が薄い → これは職場の給与設計の話。夜勤なしの選択肢で書いた「収入の構成が変わる」比較を、時給換算でやり直す材料になります
- 金額の問題ではなく、夜勤そのものが体力的に続かない → お金の話ではなく働き方の話。夜勤明けに勉強してはいけないで書いた「置き場所」の考え方で、生活全体を見直すほうが先です
1と2を分けずに「夜勤は割に合わない」とまとめてしまうと、転職しても同じ明細を見ることになります。先に分けてください。
まとめ
- 法律で決まっているのは深夜割増(22時〜5時に25%以上)。「夜勤手当」は職場の就業規則が決めるもので、法定の最低額はない
- 深夜割増の元になる金額から、家族手当・通勤手当・住宅手当など7項目は除外できる。ただし名称でなく実質で判断される
- 時間外と重なれば1.5、法定休日と重なれば1.6。足し算になる
- 明細の「夜勤」の行が深夜割増込みか別立てかを、就業規則で確認する
- 「少ない」の原因を、法定ぶん・職場ぶん・体力の3つに分けてから次を決める
金額の具体例は職場ごとに違うので、この記事には載せていません。手元の明細と就業規則、それでも分からなければ労働局・労働基準監督署の相談窓口が一次情報です。