「私立の通信制は高い」が、2026年度から変わった — 所得制限なしの就学支援金を、通信制の学費に当てはめて読む
通信制高校の記事で、学費の数字はあえて書きませんでした。年度と学校で変わるからです。
ただ、その前提のうち「年度」のほうが、2026年度に大きく動きました。高校の授業料を支える高等学校等就学支援金の所得制限がなくなり、私立の上限が引き上がったのです。ニュースは全日制の私立高校の話として流れましたが、制度の対象には最初から通信制が入っています。
「私立の通信制は学費が高いから、うちは公立しか無理」と決めていた家庭ほど、一度この数字を当てはめ直す価値があります。
何が変わったか
文部科学省の資料の言い方を借りると、改正の柱は「所得制限を撤廃し、就学支援金の支給に当たって保護者等の収入の状況を問わないこと」です。これまで年収の目安で線が引かれていた部分が、2026年度からなくなりました。
もうひとつが上限額です。年額で見るとこうなります(文部科学省リーフレット、2026年6月)。
| 学校の種類 | 支給上限(年額) |
|---|---|
| 公立高校(全日制等) | 11万8,800円 |
| 国立高校(全日制等) | 11万5,200円 |
| 私立高校(全日制等) | 45万7,200円 |
| 私立高校(通信制) | 33万7,200円 |
私立の上限は「私立高校の平均授業料を勘案した水準」と説明されています。通信制の私立だけ別の額が置かれているのがポイントで、ここが通信制の読み方の入口になります。
通信制は「月額」「単位」「48月」の3つで読む
就学支援金は年額で語られますが、実際の支給限度は月額か単位あたりで決まっています。通信制は単位制の授業料を取る学校が多いので、単位あたりの数字を知っておく必要があります。説明会資料の表から、高校の通信制と全日制を抜き出します。
| 公立・定額授業料 | 公立・単位制授業料 | 私立・定額授業料 | 私立・単位制授業料 | 支給期間 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 高校 全日制 | 9,900円/月 | 4,812円/単位 | 38,100円/月 | 18,528円/単位 | 36月 |
| 高校 通信制 | 520円/月 | 336円/単位 | 28,100円/月 | 13,668円/単位 | 48月 |
単位制授業料の場合は「通算74単位、年間30単位まで」という上限が付きます。
この表から読めることが3つあります。
1. 公立の通信制は、もともとほぼ授業料がかからない。 月520円、1単位336円という限度額は、公立通信制の授業料水準そのものです。所得制限撤廃の恩恵が大きいのは、公立ではなく私立です。
2. 私立の通信制は、単位あたり最大13,668円まで支援される。 たとえば1単位あたりの授業料が1万円の学校なら、その全額が支援の範囲に入ります。1単位2万円なら、差額の6,332円が自己負担として残ります。自分の候補校の「1単位あたりの授業料」を資料で確認し、13,668円と比べる。これが2026年度以降の通信制の学費の見方です。
3. 支給期間は48月。全日制の36月より1年長い。 通信制は卒業まで3年以上かかる設計を選ぶ生徒がいることを前提に、支給期間が長く取られています。休学や転入で年数が延びても、4年分までは支援の範囲内です。
支援の外にあるもの
数字が大きくなったぶん、「全部無料になる」と受け取られやすい制度です。外にあるものを先に書いておきます。
- 授業料以外は対象外。 入学金、施設設備費、教材費、スクーリングの交通費・宿泊費は就学支援金の範囲外です。授業料以外の教育費には「高校生等奨学給付金」という別の制度がありますが、こちらは所得要件のある仕組みです
- サポート校は対象外。 文部科学省のQ&Aは、サポート校は就学支援金制度の対象ではないと明記しています。通信制高校本体の授業料は対象、併用するサポート校の費用は自己負担、という切り分けです。私立通信制を「学校+サポート校」で考えている家庭は、ここで見積もりが大きく変わります
- 単位の上限を超えた分。 年間30単位、通算74単位を超えて履修した分は支援されません
つまり、私立の通信制で総額を見積もるときは「授業料(支援あり)」「授業料以外(別制度)」「サポート校(支援なし)」の3段に分けて数えることになります。前の記事で「サポート校を併用する場合は二重にかかる」と書いたのは、この3段目の話でした。
申請は学校経由、e-Shienで
申請はオンライン申請システム「e-Shien」から行い、ログインIDは学校から配布されます。都道府県によって必要書類が異なる場合があるので、学校の案内が優先です。
もうひとつ、リーフレットに小さく書かれている注意があります。学校によっては、支給決定までの間いったん授業料を徴収し、後から就学支援金相当額を還付することがある、という点です。入学直後の数か月は授業料をいったん立て替える可能性があるので、資金の準備はそのつもりで。経済的に難しい家庭向けの徴収猶予の仕組みもあり、これは学校に相談することになっています。
なお、在留資格などの要件で新制度の対象にならない在校生には経過措置が用意されています。また新制度は法施行後3年以内に検証と見直しが予定されているので、この記事の数字は「2026年度時点」として読んでください。
まとめ
- 2026年度から就学支援金の所得制限がなくなった。通信制高校も最初から対象
- 私立通信制の上限は年33万7,200円(月28,100円、単位制なら1単位13,668円・年30単位まで)。候補校の「1単位あたりの授業料」と比べる
- 支給期間は48月で、全日制より1年長い
- 授業料以外・サポート校・上限超過の単位は支援の外。総額は3段に分けて数える
- 申請はe-Shien。支給決定まで授業料を立て替える学校がある
前の記事の「数字は最新の資料で確認する」は変わりません。変わったのは、資料の授業料の欄を見るときに、隣に置く数字ができたことです。