「8割戻る」の裏で、6割に下がったものがある — 2024〜2025年の改正で教育訓練給付はどう変わったか
「受講料の8割が戻る」という見出しは、ここ2年でよく見かけるようになりました。
たしかに上がっています。ただ、同じ法改正の中で、下がったものがひとつあります。辞めて昼間の学校に通う人の生活費を支えていた給付です。
受講料の2〜8割が戻る話の続きとして、2024年10月と2025年4月の2段階で何が変わったのかを、上がった側と下がった側の両方から整理します。
変わったのは3つ、時期は2段階
厚生労働省の施行期日一覧から、学び直しに関わる項目だけ抜くと次のとおりです。
| 施行日 | 変わったこと | 方向 |
|---|---|---|
| 2024年10月1日 | 教育訓練給付金の給付率引上げ(受講費用の最大70%→80%) | 上がった |
| 2025年4月1日 | 自己都合退職者が教育訓練等を受けた場合の給付制限の解除 | 有利になった |
| 2025年4月1日 | 教育訓練支援給付金の給付率引下げ(基本手当の80%→60%)、制度は2026年度末まで継続 | 下がった |
なお2025年10月には教育訓練休暇給付金も新設されています。この記事では上の3つを扱います。
上がった側 — 受講料の給付率
給付率の現在値は次のとおりです(厚労省「教育訓練給付金」ページの記載)。
| 区分 | 基本 | 資格を取って就職 | 賃金が5%以上上昇 |
|---|---|---|---|
| 専門実践教育訓練 | 50%(年間上限40万円) | 70%(年間上限56万円) | 80%(年間上限64万円) |
| 特定一般教育訓練 | 40%(上限20万円) | 50%(上限25万円) | — |
| 一般教育訓練 | 20%(上限10万円) | — | — |
専門実践の80%と特定一般の50%は、2024年10月以降に開講した講座が対象です。それより前に始まった講座には、旧来の上限(専門実践70%・特定一般40%)が適用されます。パンフレットの日付が古いまま棚にあるなら、そこに書かれた率はもう一段低い可能性があります。
80%まで行くには「修了して資格を取り、雇用され、さらに受講前より賃金が5%以上上がる」という3段の条件を全部満たす必要があります。基本の50%は6か月ごとに支給されますが、残りの30%は後から差額で戻る形です。受講中の手元のお金は50%分で計算するのが安全です。
下がった側 — 教育訓練支援給付金
こちらは受講料ではなく、生活費の話です。
教育訓練支援給付金は、専門実践教育訓練を受ける人のうち、離職して昼間の学校に通うなど一定の要件を満たした人に、雇用保険の基本手当の日額に相当する額の一定割合を支給する制度です。看護・リハビリ・保育の養成課程のように、昼間フルタイムで通う必要のある学校を、辞めてから通う人のための給付でした。
この割合が、2025年4月1日以降に受講を開始する場合、基本手当の80%から60%に下がりました。制度自体は暫定措置で、2026年度末(受講開始日が2027年3月31日以前)までの継続が決まっています。
要件はかなり細かく、パンフレットから主なものを拾うと次のとおりです。
- 初めて教育訓練給付金を受ける人で、受講開始時に45歳未満
- 昼間通学制であること(夜間・通信制など働きながら受けられる講座は対象外)
- 受給資格確認時に一般被保険者でないこと(=離職していること)
- 受講開始日が2027年3月31日以前
- 原則2か月に1回、ハローワークで認定を受ける。欠席した日は支給されず、2か月の出席率が8割未満になると以後いっさい支給されない
- 講座をやめたり、期間内に修了する見込みがなくなったりした場合も支給されなくなる
そしてもうひとつ、計算に直結する点があります。基本手当(失業給付)の残日数がある間は、支援給付金は支給されません。 待期の期間や給付制限の期間も同様です。つまり順番は「先に失業給付、それが終わってから支援給付金」です。
3つを並べると、辞めて学校に通う人の1年はこう見える
2025年4月以降に、自己都合で退職して昼間の専門実践教育訓練に入る人の場合、収入の流れは次の順になります。
- 待期7日 — 何も出ない
- 給付制限 — 本来は原則1か月止まるが、対象の訓練を受講しているなら受講開始日以降は解除される
- 基本手当 — 所定給付日数のぶん、通常どおり求職活動の実績を出しながら受給
- 教育訓練支援給付金 — 基本手当が終わったあと、訓練期間中に基本手当日額の60%を2か月ごと
受講料側は、これと並行して専門実践教育訓練給付金の50%が6か月ごとに入り、修了・就職・賃金上昇の条件を満たせば差額が後から足されます。
改正前と比べると、入口(給付制限の解除)は良くなり、出口に近い期間(支援給付金)は薄くなった、というのが正確な要約です。2年・3年かかる養成課程の後半で効いてくるのは支援給付金のほうなので、「8割戻る」だけを見て収支を組むと、後半で計算が狂います。
自分の場合の数字を出す順番
制度の数字は揃いました。残るのは自分の数字です。
- 講座の指定区分と開講日。 厚労省の検索システムで、専門実践か特定一般か、2024年10月以降の開講かを見る
- 基本手当の日額と所定給付日数。 離職前6か月の賃金から決まるので、ハローワークで確認する
- 受講開始日と2027年3月31日の位置関係。 支援給付金を当てにするなら、ここを超えると制度自体がなくなる可能性がある
- 昼間通学制か。 夜間・通信制なら支援給付金は最初から対象外。代わりに辞めずに使える休暇給付金の側を見る
まとめ
- 受講料の給付率は2024年10月開講分から最大80%。ただし80%は「修了・資格・就職・賃金5%上昇」を全部満たしたときの差額支給で、受講中は50%で計算する
- 2025年4月以降の受講開始から、離職者の生活費を支える教育訓練支援給付金は基本手当の80%→60%。45歳未満・昼間通学制・初回・2027年3月31日以前の受講開始が要件
- 支援給付金は失業給付が終わってから。給付制限中や基本手当の残日数がある間は出ない
- 入口は有利に、養成課程の後半は薄く。長い課程ほど、支援給付金の60%で後半の生活費を組み直す
いずれも要件の細部は年度ごとに動きます。決める前に、講座の開講日と自分の離職日を持ってハローワークで確認してください。