「働けば返さなくていいお金」が3種類ある — 保育士の修学資金・就職準備金・保育料の貸付
「戻りたい気持ちはある。でも、いま一番足りないのはお金と時間」
ブランク5年でも戻れるかの記事で、復職の入口に「就職準備金の貸付制度を確認する」を置きました。そのとき「金額や条件は自治体ごと」とだけ書いたのですが、国の側の枠組みには上限額と免除の条件がはっきり書かれています。
この記事では、その国の枠組みを一段くわしく見ます。名前は「貸付」ですが、一定期間働けば返さなくていい設計になっている点が本体です。
3つの貸付を先に並べる
こども家庭庁の資料に載っている「保育士修学資金貸付等事業」のうち、個人が受けられるものを3つに絞ります。実施するのは都道府県と指定都市で、費用の9/10を国が持つ仕組みです。
| 貸付 | 誰が受けるか | 上限額(資料の記載) | 返さなくてよくなる条件 |
|---|---|---|---|
| 修学資金 | 保育士養成施設に通う学生 | 学費 月5万円、入学準備金20万円(初回のみ)、就職準備金20万円(最終回のみ)。貸付期間は最長2年 | 卒業後、貸付を受けた都道府県等の施設で5年間働く |
| 就職準備金 | 潜在保育士(資格を持っていて現場にいない人)が再就職するとき | 40万円 | 再就職後、同じ都道府県等の施設で2年間働く |
| 保育料の一部 | 未就学児のいる潜在保育士が再就職するとき | 月5.4万円の半額、貸付期間1年 | 再就職後、同じ都道府県等の施設で2年間働く |
免除の条件は「貸付けを受けた都道府県等にある施設」での実務従事です。県をまたいで就職すると条件を満たさないことになるので、どこで借りて、どこで働くかは最初にそろえておく必要があります。
使われている制度です
「あるのは知っているけど、実際に使う人は少ないのでは」と思う人もいるかもしれません。資料には令和6年度の貸付決定者数が載っています。
| 貸付 | 令和6年度の貸付決定者数 |
|---|---|
| 修学資金 | 4,439人 |
| 就職準備金 | 1,372人 |
| 保育料の一部 | 1,418人 |
就職準備金と保育料の貸付だけで年に2,700人以上が使っている。復職の道具として、めずらしいものではありません。
それぞれ、どんな場面の話か
修学資金は、これから資格を取る人向けです。養成校に通う2年間、学費に月5万円、入学時に20万円、就職時に20万円。さらに生活保護世帯とそれに準ずる経済状況の人には月4〜5万円程度の生活費加算があります。免除の条件は「卒業後5年」で、3つの中で一番長い。働きながら取れる資格の一覧で書いたように、保育士は養成校か国家試験のどちらかで取れますが、養成校ルートを選ぶなら費用の相当部分をこの貸付で持てる設計です。
なお資料には、養成校に通っていて学費の貸付は受けていない学生でも「就職準備金のみ」を借りられる、という記載があります。
就職準備金は、資格はあるが現場を離れている人が戻るときの40万円です。引っ越し、通勤の道具、保育で使うものの買い直し。2年働けば返還不要。「戻るかどうか迷っている」段階の人にとって、迷いの中身が「初期費用」なら、この40万円で消える種類の迷いかもしれません。
保育料の一部は、自分の子どもがまだ未就学の潜在保育士向けです。自分が保育の仕事に戻ると、自分の子どもを預ける保育料が発生する。その一部(月5.4万円の半額が上限)を1年間貸し付け、2年働けば免除。復職の障害が「自分の子の預け先と費用」である人に、正面から当てた設計です。
2026年度の募集から変わる点
資料には「令和8年度募集より貸付対象者の家庭の経済状況に係る要件を具体化【見直し】」とあります。修学資金を含む貸付で、家庭の経済状況の要件が明文化されるということです。
具体的な線引きは資料に書かれていません。2026年度の募集要項を都道府県の窓口で確認する必要があります。前年の情報で「対象になるはず」と思っていた人ほど、ここは見直してください。
申し込む前に決めておくこと
- どの都道府県・指定都市で働くか。 免除の条件は「貸付を受けた都道府県等の施設」での勤務。借りる場所と働く場所を最初にそろえる
- 何年続ける見込みか。 修学資金は5年、就職準備金と保育料は2年。途中で辞めると返還が発生する制度なので、「返す前提」でも成り立つ額かを見ておく
- 募集の時期と枠。 実施主体は都道府県・指定都市で、募集の時期や枠は自治体で違います。資料には書かれていないので、お住まいの自治体名と「保育士 修学資金」「就職準備金」で窓口を探してください
- 相談先。 復職の記事で書いた保育士・保育所支援センターは、こうした貸付事業の案内も担っています。求人より先に、ここで貸付の有無を聞くのが順番です
まとめ
- 都道府県・指定都市が「働けば返還免除」の貸付を3種類用意している。国が費用の9/10を持つ
- 修学資金は学費月5万円+入学・就職各20万円、卒業後5年の勤務で免除
- 就職準備金は40万円、保育料の一部は月5.4万円の半額を1年、どちらも2年の勤務で免除
- 免除は「貸付を受けた都道府県等の施設」で働くことが条件。借りる場所と働く場所をそろえる
- 2026年度募集から経済状況の要件が具体化される。最新の募集要項で確認する
金額と条件は国の資料に基づく上限で、実際の運用は自治体ごとです。決める前に、必ず自分の都道府県の窓口で確認してください。